《響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 後編》简介:

久美子たち三年生部員にとって最後となる吹奏楽コンクールを控え、さらに練習に熱が入る北宇治高校吹奏楽部の部員たち。波乱のオーディション、滝の方針への疑念、自身の進路…苦悩する久美子は、ついに麗奈とぶつかってしまう。はたして久美子は最大の試練を乗り越えられるのか?そして、最後のコンクールの結果はいかに―!?大ヒット吹部青春エンタメシリーズ、ついにクライマックス!

《響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 後編》摘录:

 スクールバッグを床に置き、奏は久美子の隣に腰かけた。楽器の準備を始めたほかの部員を尻目に、奏は一向にその場から動こうとしない。構えていたユーフォを膝に置き、久美子は身体ごと奏のほうに向き直った。 「奏ちゃん、練習始めないの?」 「久美子先輩をもう少し観察しようかと」 「な、なんのために?」 「そうすれば口を割るかと思いまして」  頬に手を添え、奏は小首を傾げてみせる。先ほどの滝のそれとは違う、他者の目を意識した振る舞いだった。んふ、と奏が甘えるように久美子にすり寄る。 「高坂先輩と喧嘩されたんでしょう?」 「なんでそう思うの?」 「久美子先輩が理由もなく一人で朝練に参加するのは珍しいので。私はいいと思いますよ。喧嘩するのは人間関係が健全な証です」 「なにその理論」 「衝突の許されない関係はいびつですよ。相手を神様とでも感じていれば、逆らおうと思うことすらないでしょうけど」  語尾ににじむ揶揄めいた響き。彼女が言う関係とは、誰と誰のことを指しているのだろうか。世間一般の話か、滝と部員か。それとも、麗奈と久美子のことか。  思わず渋面になった久美子に、奏はクツクツと愉快そうに喉奥を鳴らした。 「久美子先輩が悩んでいるところを見るの、私、好きですよ。可愛らしいので」 「ワア、全然ウレシクナイ」 「照れる必要はありませんのに。素直じゃないんですから」  口元に添えられた指と指の隙間から、彼女の白い歯がのぞき見える。こんなふうにはしゃぐ奏を見るのは久しぶりかもしれない。そう思うと、胸の奥がツキリとうずいた。  オーディションの結果発表以降、奏とともにいる時間は格段に減ってしまっていた。